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プロジェクト

晴好夜学〈第12回〉
「NEVER GIVE UP」
川上三太郎さん

 第12回目の「晴好夜学」は「西日本新聞」で長期連載「新・何しようと 福博であい談」を担当している、通称・西日本新聞の名物記者、川上三太郎氏を招いた。 テーマは「NEVER GIVE UP」。集まった30人弱の人々は、先人からどんな話が飛び出すのかと、目を輝かせて登場を待った――。

講師:川上三太郎さん
2012年6月4日(月) 会場:建立寺

プロフィール/1945年広島市生まれの福岡市育ち。1970年に西日本新聞社に入社し、鹿児島、大分、福岡、佐賀、東京で勤務。定年後は日曜日版の西日本新聞にてコラムを執筆している。

日本に零(=原点)はあるか

 「日本は戦争に負けた。果たして、その日本に原点は、零地点はあるのか」
突然の問いかけ。どうだろうか。正直に言うと、そんな考え方は今までしてこなかった。戦争に負け、何もかもをなくなった日本は今ここまで持ち直している。確かに近年では原発の問題や政治の問題があるが、それでも発展している国であることは明確だ。しかし「原点がわからないと踏ん張れないじゃないか」
 この川上先生の言葉にハッとした。そうだ。今こそ、原点に戻るべきなのだ。初心に戻る、これと同じだ。

今、求められているもの=対話力

 とある病院では外科医が一人しかおらず、外科の手術ができないという。なぜか。それぞれが専門分野化したため、一つひとつを深く知っていなければならないからだ。しかし、それでは根本的な問題解決にはならない。みんなが力をあわせなければ、手術は成功しないからだ。
 ここで必要とされるのが「対話力」なのだという。自分の意見をはっきりと伝えなければコミュニケーションが図れないのである。

記者としての誇り

 川上先生の話を聞いていると、記者らしく、自分の足で様々な場所を回り、人と出会い、そこからの体験を語られていることが、よく分かる。川上先生の原点は、恐らくここになるのだろう。
 インターネットやテレビに頼らず、自分の目で、耳で、感じとったことを記事にするのだ。そこにはまったく嘘はない。石川さゆり、大学教授、作家などなど、ありとあらゆる、福岡にゆかりのある人物とのエピソードを織り交ぜながらの川上さんの話は、実に薀蓄に富んでいる。
 最後に「人間誰でも700年までさかのぼれば直系が1億人になる」という話が、強く心に残った。相田みつを氏の「命のバトン」という詩を思い出しながら、改めて自分がここに生かされていることのありがたみを噛み締める。目を閉じてバトンをたどっていくと、私の原点が見える気がした。

日本は変われるのか

 会の締めくくり、「日本は本当に変われるのか否か、みんなで意見を交換しあいましょう」との川上先生の言葉に、誰もが口をつぐんでしまった。変われるのだろうか、と考えている人がほとんどだったかもしれない。私は「変われるかもしれない」と思う一方で「どうやって変わるのだろうか」と、悩んでいた。
 しかしこれこそが今の日本の政治をよく表しているのだと思う。変わらなければと思う一方で、変化を恐がっているのだ。というより、変わる努力をしていない。
 変わる精神をもて。
 零=原点に戻って、自分を見つめなおすべし。
 川上先生の言葉にはそんな思いが込められているように感じた。

文:株式会社チカラ 内川美彩 写真:比田勝 大直

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