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晴好夜学〈第17回〉
「衰退した地方商店街に活路はあるか?」
木下敏之さん

 よく通る声と快活な語り口、元ラガーマンだというのが頷ける爽やかな佇まい。リアルなデータを用いて、質疑応答を交えつつ自らの経験を語る木下さんを前に、参加者はまるで大学の講堂で講義を受けているような感覚に。果たして、この講義から生徒たちが学んだものとはー。

講師:木下敏之さん
日時:2013年10 月4日(金) 会場:建立寺

プロフィール/佐賀県佐賀市生まれ。ラ・サール高等学校、東京大学法学部政治学科卒業。農林水産省で官僚としてキャリアを積んだ後、1993年佐賀市長選挙に出馬し39歳の若さで初当選(2期)。現在は福岡大学経済学部教授、地域経営コンサルタントとして、九州の活性化に尽力する。

さて、クイズです

 「九州は一割経済と言われていますが、日本企業売上ランキング100位以内に入っている九州の企業(九州に本社を置く)は何社あるでしょうか。一斉に頭を巡らす生徒たち。一割……ということは10社? おそらく少しの期待も含めてそう考えた人が大半であっただろうが、答えはなんと「1社」。74位の九州電力のみだという。これが現実、そしてこれが、九州が支店経済と言われるゆえんだ。
 しかし、支店経済の何がいけないのか。心にそんな疑問が生まれた瞬間、先生はすかさずこう続けた。「そう、なぜいけないのか。まず、せっかく育った優秀な若者が東京に流れてしまいます。また支店では意思決定に時間がかかり、研究機関も少ないため、新しいビジネスが生まれにくい。さらに、現在支店はIT化や交通機関の発達により、縮小化される傾向にあるのです。
 ちなみに、福岡に住む20代、30代の女性が結婚しにくいと言われるのも、こうした若手男性の流出が一因であるとのこと(!)。該当する女生徒たちは、思わず苦笑いする。今年150万人の人口突破のニュースに沸いた福岡市だが、県と首都圏の社会増減で比較すると実はマイナス。福岡から首都圏に人が流れているのは間違いないようだ。
 「九州一でいい、支店経済でも満足、潜在意識の中でそう思っている人が多いのも事実でしょう。まずはそこから抜け出したいと”思うこと”が大事なのではと先生は問いかける。

衰退する地方商店街の現状認識と活路

 生曰く「それでも福岡は黙っていても人が歩いているのだから、恵まれている」らしい。佐賀市長時代に「衰退した地方商店街」を自身の目で見てきた先生。スライドに映し出された、佐賀市街地のとある商店街の日曜午後の風景(当時)では、シャッターの降りた空き家が見え、人気はなく閑散としていた。
 木下さんが市長として取り組んだのは、1.都市計画の見直し、2.中心市街地での集客対策の実施、3.商店主を対象とした勉強会の実施など。行政ができることももちろん多いが、キーとなるのは地域の人々、地主の方々の「このままでいい」からの意識改善にあったという。
 また、日本一人が集まる観光地「ディズニーランド」やおばあちゃんの原宿「巣鴨商店街」鬼太郎の町「境港」を実例とし、「地元にずば抜けた商品力がないというのであれば、魅力ある商品を作り出せばいい」というアイデアのもと、「佐賀城下ひなまつり」などの各種イベントを立ち上げ、積極的に県外への広報を行っていったそうだ。

とんがっていこう!

 柳橋連合市場をはじめ商店街や個人商店が多く存在する晴好エリア。町活性化の具体的なアドバイスとして先生は、「”わが町といえば○○”と言えるものを作ること。それを決めたら、とにかく徹底して”とんがる”ことが大事と話す。商店主同士が一体となったアイデアを出し、同業主の出展を歓迎するなどの、横同士の協力体制は無論のこと。日本人の富裕層や、外国人を視野に入れることも今後の課題だ。
 そういう意味では、商店主同士の横のつながりから生まれ今年第11回を迎えた「晴好夜市」は、きっと町の活性化にひと役買っているに違いない。それでも「これでいい」と思わず、晴好を、ひいては福岡、九州を元気にしていく意欲を持つことが大事なのかもしれない。そうすれば、九州支店経済も改善されて、適齢期の女性の悩みも減る……のかも(!)。

文:吉野友紀 写真:比田勝 大直

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