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プロジェクト

晴好夜学〈第16回〉
「再犯のない社会を目指して」
副島 勲さん

 不動産会社「オレンジライフ」を経営する副島さんは平成8年に法務省福岡観察所保護司を拝命。その後、平成24年には「株式会社ヒューマンハーバー」を設立し、社会貢献活動による社会問題解決を目的としたビジネスに取り組んでいます。今回は、副島さんの目指す社会作りについて伺いました。

講師:副島 勲さん
日時:2013年6月5日(水) 会場:建立寺

出所者の支援をしたい――その想いが形に

 副島さんは不動産業を営む傍ら、約17年間、保護観察処分を受けた出所者の人々を見守る保護司として活動してきました。その中で、気づいたことがあります。出所後に再び罪を犯してしまう人が年々増えているのです。
 「刑務所を出所した人が5年以内に再び罪を犯す割合は40%を超えています。そのうちのほとんどが、刑務所にいた事実が邪魔をして、職に就けないという人たちなんです」と、副島さんは真剣な眼差しで語ります。なんとかして、そんな人々を救えないだろうか……行き場をなくした出所者を受け入れる施設を作れないだろうか……。そうしてたどり着いた答えが「株式会社ヒューマンハーバー」の設立でした。

ヒューマンハーバーが目指すもの

 副島さんが平成24年に設立した「株式会社ヒューマンハーバー」は一般的な株式会社とは異なります。株主への利益配当がまったくないのです。これは、平成16年にノーベル平和賞を受賞したムハマド・ユヌス博士が提唱している「ユヌス・ソーシャル・ビジネス」に基づいた考えで、利益の最大化を追求するのではなく、社会貢献を目的としたビジネスモデルです。
 「ムハマド・ユヌス博士が認定した企業は日本では弊社が初めてです。このビジネスモデルは、経済界全体の協力と支援があってこそ成り立ちます」と、副島さんは話します。

再犯を防止するための取り組み

 副島さんは、前述したビジネスモデルに基づく持続的な資源リサイクル業を基盤としながら再犯を防ぐために取り組んでいます。主に、再犯の大きな要因とされる「宿泊」「教育」「就労」の3つを出所者に提供できるような支援の形を考えているとのこと。
 まず、教育支援としては「そんとく塾」の開催です。ここでは、経験豊富な教育関係者とそのネットワークを中心として、出所者の自立を図るのが目的。そして、ヒューマンハーバーの社員寮が「てんしん館」なのです。出所者はここに寝泊まりし、教育を受け、就労の大切さを学ぶことで生まれ変わることができます。
 さらに「てんしん館」では「W-Cats」の取り組みも行っています。これは飼い主のいないネコを社員寮で飼育しながら、譲渡先を探すプログラムです。ネコを育てることで責任感の向上や規則正しい生活習慣の獲得をすることが目的だと、副島さんは話します。

ある蔵の発展に向けて

 これらの教育・宿泊・就労の三位一体支援が、ヒューマンハーバーが目指すべきところ。なかでも就労支援の「ある蔵」がヒューマンハーバーの中核となります。ここでは、各企業から排出されるスクラップや廃棄物を買い取り、仕分けや電線の皮むきを行い、それらを売却することで利益をあげるのが主。もちろん、これまでと同じ市場価格での取り引きです。
 「資源の甦りを目指すとともに、人間の甦りを目指すことが、我々の目標です。しかし、それには多くの企業の支援が必要になります。すでに、福岡県内にある100社以上もの企業がこの理念に賛同し、事業系スクラップの有償提供に合意してくださっています。しかし、まだまだ皆さんの協力が必要なんです」と、副島さんは力強く語ります。5年以内に福岡県で自立更生達成者を100名排出した後、30年後には全国で年間5000名とすることで、再犯率低下に寄与することが目標だという副島さん。
 この取り組みは、出所者の生きる糧に繋がるだけでなく、再犯による被害者の発生を未然に防ぎ、かつ、1人年間248万円という受刑者への行政支出をも減らすことができます。再犯のない社会は誰もが望むもの。そんな社会づくりに少しでも貢献できるならば、これほど嬉しいことはないでしょう。

株式会社ヒューマンハーバー→ http://www.humanharbor.net/

文:株式会社チカラ 内川美彩 写真:比田勝 大直

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