「晴好 HARUYOSHI」は、NPO法人はるよしと福岡の酒蔵とのコラボレーションで造る、オリジナルの日本酒。毎回異なる酒蔵がパートナーとなり、バトンをつないでいくのが特徴です。
これまで、うきは市の「磯乃澤」(01)、朝倉市の「篠崎酒造」(02)、筑紫野市の「大賀酒造」(03)、大刀洗町の「みいの寿」(04)とのご縁をいただき、一緒に酒「晴好 HARUYOSHI」シリーズを生み出してきました。その年限り・唯一無二のお酒ができあがる喜びはもちろんのこと、酒米づくりから何度も顔を合わせ、酒造りを通じてたくさんの方とのストーリーを育んでいけることがなによりの醍醐味です。
そして今回、5蔵目のパートナーとして酒造りを担ってくれたのは、福岡県南東部に位置する八女市の蔵「喜多屋」です。

酒を通して多くの喜びを伝える、という想い

福岡市から車で約1時間の場所にある八女市。全国的に知られる「八女茶」の産地であり、丘陵地に広がる美しい茶畑の景観は、この地ならではの風情を感じさせます。市の中心となる八女福島は、昔ながらの土蔵造りの町家や商家が立ち並び、昔ながらの懐かしさが漂うエリア。提灯や仏壇、手すき和紙などの伝統工芸品が代々受け継がれ、クラフトマンシップが息づくまちです。
この八女福島で1820年に創業した酒蔵「喜多屋」も、その職人魂を受け継ぐ老舗のひとつ。喜多屋という屋号には、「酒を通して多くの喜びを伝えたい」という志が込められており、200年以上に渡りその思いを守り続けています。
喜多屋が家訓ならぬ「家憲」として掲げているのが、「主人自ら酒造るべし」という言葉。蔵元は経営者としての役割を担うだけでなく、自ら酒造りに深く関わるべきだという考えが受け継がれているのです。創業当時、ほとんどの酒蔵では蔵元が経営を担い、酒造りは冬にやってくる杜氏に任せるのが一般的でした。しかし喜多屋では、「売るものを知らずして蔵元を名乗るべきではない」という信念から、蔵元自らが酒造りに携わることをルールとしたのです。杜氏は別に立てつつも、二人三脚で酒造りを行うという方針は今も大切にされ、蔵元自身が酒の品質を理解することで、より良い酒を生み出し続けています。
芳醇爽快な日本酒で、世界に挑む

喜多屋が目指しているのは、香り高く味わい深い「芳醇」と爽やかでキレのある「爽快」を併せ持つ、「芳醇爽快」な酒。福岡の料理は、少し甘めの醤油やしっかりとした味わいが特徴であるため、淡麗辛口では料理に負けてしまいます。口に含んだ瞬間に豊かに広がるふくらみがありながら、後味はクリアで軽やか。余韻が長く残らず、料理の味を引き立てる。そんな食中酒を追求し続けてきました。
世界にも通用する酒造りを目指し、2013年にはロンドンで開催された酒類競技会 IWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)の日本酒部門で、「大吟醸 極醸 喜多屋がナンバーワンの『チャンピオン・サケ』に輝く快挙を達成。福岡の酒蔵としては初の受賞で、喜多屋の名が広く海外に知られる契機となりました。
女性蔵元としての、決意

名実ともに福岡を代表する酒のひとつ蔵、喜多屋。その歴史ある蔵が今、新たな転機を迎えています。
その中心にいるのが、次期八代目・木下理紗子氏。七代目・木下宏太郎氏を父に持ち、幼い頃から蔵に出入りして働く父や蔵人たちの姿を見ながら育ちました。「大好きな喜多屋をほかの人が継ぐのは寂しい」と、中学2年生で家業を継ぐと決意したのだそう。父に思いを伝えると、「理系に進んで学ぶこと」が条件として課されました。
「酒造りは微生物との対話。麹菌と酵母の働きを理解するために、大学でバイオテクノロジーを学びなさい、と。でも、数学と理科は大の苦手で(笑)」と理紗子氏。それでも覚悟を決め、大学・大学院で微生物を研究。卒業後は山形の出羽桜酒造で修行を積み、2022年春、満を持して喜多屋へ戻ってきました。
今でこそ女性蔵元は増えつつありますが、かつては日本酒造りに女性が関わることすらできない時代もありました。酒蔵業界では跡取りに男性がいない場合、家業を継ぐには婿を取るのが一般的とされていましたが、理紗子氏は「私がやるのが一番しっくりくる」と迷いなく自らの道を選択。「先入観にとらわれる必要はない」と新たな時代の酒造りに挑んでいます。
オリジナル酵母と共に、新たな喜多屋をつくっていく

喜多屋が「新たな時代を迎えた」と言うのにはもうひとつ理由があります。
2023年、喜多屋は酒造りに使用する酵母をすべて、独自に開発したオリジナルの「KR酵母」に切り替えるという革新に踏み出しました。この「KR」はKinoshita Risakoの頭文字。つまり、理紗子氏自身が開発した酵母なのです。
そのきっかけは2018年、理紗子氏が大学院に進学した年のこと。九州大学、酒類総合研究所、喜多屋の三者による共同研究がスタートしました。そのテーマとなったのは、酵母開発にかかる膨大な労力と時間を効率化し、より短期間で実用化にこぎつける技術の確立。この技術を用いて、喜多屋が目指す「芳醇爽快」をさらに引き立てる4種類の酵母(KR01/02/03/04)が、わずか3年で完成したのです。
これまで、酵母の開発は大手メーカーや県の研究機関が主導するものとされていました。しかし、理紗子氏は「蔵元が自ら酒の香りや味を決める酵母を開発すれば、商品の個性が広がり、市場がより面白くなるのでは」という想いから、他の蔵元もオリジナル酵母の開発に挑戦してもらえたらと、この技術の特許を酒類総合研究所に譲渡しました。
今、喜多屋は唯一無二の「KR酵母」という新たな武器を手に、大きな変革の時を迎えています。伝統を守りながら、未来の喜多屋を作り上げていく。その挑戦は、すでに始まっています。

KR02酵母でつくる王道の食中酒、酒「晴好」05
学生時代から、はるよしの町で飲み歩きを楽しんでいたという理紗子氏。今回の酒「晴05」のオファーも、「大好きなまちとのコラボレーションで嬉しかった」と快諾してくれました。「はるよし地域には、昔ながらの店と新しいスタイルの店がうまく共存していますよね。地域の中にいろんな魅力が溢れていて、多様性豊かなエリアというイメージがあります」。
「晴好05」は、この多様性を意識して造られました。酵母にはKR02を使用し、吟醸香が立ちすぎず、料理を引き立てるバランスの良い香りが特徴。口に含むと柔らかく膨らみ、キレの良さが際立ちます。さまざまな料理と相性が良く、思わずもう一杯飲みたくなるような、まさに王道の食中酒と言えるのではないでしょうか。
喜多屋渾身の一期一会の日本酒。ぜひ、みなさんも味わってみてください。

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