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酒「晴好 HARUYOSHI」ストーリー Vol.3 酒蔵「いそのさわ」・高木亮三郎さん編

酒「晴好 HARUYOSHI」ストーリー 、まずはこちらをどうぞ。

Vol.1  NPO法人はるよし編

Vol.2 米農家・濱地一好さん編

酒蔵「いそのさわ」・高木亮三郎さんとの出逢い

 今回取り組むオリジナルの酒のテーマは「はるよし×糸島の酒米×福岡の酒蔵」。3要素、どれが欠けても成り立たないが、酒蔵探しは特に大きな課題だった。

 そもそも、酒米を持ち込んでオリジナルの酒を作ってくれるのか。少数生産でも対応してくれるのか。経験もない私たちの試みに付き合ってくれるのだろうか…。そんな懸念が次々に湧き出てきて、トキメキと不安が入り混じる、まるで思春期さながらの酒蔵ハント。

 そんな中、勇気を出して送ったラブコールに、「お話聞きます!」と爽やかなお返事をくれた方がいた。福岡県うきは市で1893年に創業した「いそのさわ」の高木亮三郎さん。現社長である四代目の泰三郎さんの後継者となる、若き五代目だ。

 実際お会いしても期待を裏切らない爽やかさ。熱烈に想いを伝えると。「日本酒をに飲んでもらう機会はどんどん増やしていきたいし、こうした試みで盛り上げてもらえるのはすごく嬉しいです。ぜひやりましょう!」と、快諾。こうして、はるよしと酒蔵、初めてのお付き合いが始まった。

名水の郷で、127年の歴史を紡ぐ酒蔵

 現在うきは市で唯一の日本酒蔵となる「いそのさわ」。社名は、創業者である髙木喜三郎さんの父「いそきち」さんと母「さわ」さんから名付けられたそうで、なんと微笑ましいことか。

 高木家に生まれ、妹と弟の三兄弟で育った亮三郎さんは、小さい頃からなんとなく「蔵を継ぐ」という想いはあったという。「継ぎたいというより、そうなるんだろうという感じでした。でも父からは、『継ぐな』と言われていたんですよ。後から思えば、それは酒業界の現状も含め、この仕事の大変さが分かっていたからだと思います」。

 大学卒業後はいったん銀行に入社して経営を学び、30歳手前で、父に懇願し蔵に入る。それをきっかけに、うきはで暮らしはじめることになるのだが、生活してみて改めてこの町の恵まれた環境を実感したそうだ。

 「耳納連山や田園風景の美しさ、フルーツや野菜などの豊かな農産物。自然がいっぱいで食材がとにかくおいしいんです。そしてなにより水ですね」。

 うきはは、耳納連山を水源とする筑後川水系から湧き出る天然水が豊富。水道水全てが、この天然水でまかなわれるという、全国でも珍しい水の郷だ。「いそのさわ」も、自社の井戸からくみあげた天然水を酒の仕込水としている。

 「お酒って、考えてみれば85%は水なんです。だから水の質はとても重要。うきはの天然水はクセがなくキレイな味で、『いそのさわ』の酒の根幹を支えてくれています」。

時代に求められる酒づくり

 天然水は、長年受け継がれてきた技術によって、蔵独自の味わいを持った酒へと変化する。「いそのさわ」では、ひと昔前は普通酒をメインに製造していたが、現在は純米酒系の特定名称酒(※1)に力を入れているという。酒づくりの上で大切にしているのは、日本酒らしい旨み。お米の甘味や旨みを最大限引き出すことに重点をおく。

「かつ、食事を楽しみながら味わえってもらえる酒を目指しています。僕の持論なのですが、日本酒は基本的に食中酒だと思うんです。何かと食べ合わせることで全然味わいが変わってくるし、もちろん料理との相性もあります。それがまた面白いですよね」

 時代の移り変わりと共に、飲み手の食生活も大きく様変わりしている。和食中心だった食卓は、イタリアンやフレンチ、アジア料理など、さまざまな味覚で彩られるようになってきた。

 「いろいろな食事に合う酒を提供したいですね。『いそのさわ』らしさの核となる部分は残しつつ、固定概念にとらわれない酒を」。どんなシーンでどんな風にお酒を楽しんでもらっているか、飲み手1人1人の顔を想像しながら、心をこめて酒づくりに励みたい、と亮三郎さんは話す。

※1 お米の精米歩合や原料など、一定の条件を満たした清酒。主に、「吟醸酒」「純米酒」「本醸造酒」を総称した呼び方で、高品質酒のことを指す。原料、製造方法などの違いによってさらに8種類に分類される

プロジェクトへの想い

 食の多彩さと言えば、まさに「はるよし」の代名詞だ。そんな町によく似合い、蔵の特徴をいかした酒をつくる。このシンプルな難題に、亮三郎さんは果たしてどう応えるのか。本格始動は翌年なのに、急遽プレ版をつくることとなり、まずは少数生産にとりかかる。

 「キレのいい食中酒で、飲み飽きせず、素材の旨みを引き立てる酒…と考えて、うちの蔵の主力商品である『駿』をベースに考えました」。

 穏やかながらも主張する香りを持ち、後味がとてもきれいな「駿」。もともと全国から厳選した山田錦を使っているが、酒「晴好 HARUYOSHI」では、糸島産のみを使用する。

 「糸島は全国的にみても素晴らしい山田錦の産地なので、仕上がりが楽しみです。酵母は同じものですが、今回は小さなタンクで仕込み、麹づくりもすべて手づくりで行いました。『駿』とは貯蔵期間も異なるので、また違う味わいになると思います」

 取材時、私たちが出逢ったのはまだタンクに入ったままの濾過前の酒。ここからまだまだ変化し、手元に届く頃にはどういう表情を見せてくれるのか…生まれたての赤ちゃんを見守るような嬉しさに包まれる。

 「僕も、本当に感動しました。ここから火入れなどを行い、みなさんの手元に届くタイミングに合わせて調整していきます。ここまでは互いに試行錯誤で大変さもありましたが、それも含めて面白いプロジェクトだと実感しています。飲み手との距離感も近い感じがするし、実際に味わったみなさんからの感想をいただけたら嬉しいですね」

 たくさんの想いが込められた「晴好 HARUYOSHI」の誕生。これから毎年味わっていくであろう喜びを、多くの人と分かち合いたい。そして、福岡の酒蔵をもっともっと多くの人に知ってもらいたい。まだスタートラインに立ったばかりだが、焦らずゆっくりと歩んでいきたいと思う。

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